TOKYO埋没毛

情緒しか書きたくない。ホモ。

浅間神社

桜を見ても、昔ほどきれいと思わなくなった。

 

中学3年のとき、大学まで続く、女性との最後の大恋愛をした。

静岡市浅間神社の100段階段を登ったところで、つっかえながら告白をして

4月5日から付き合い始める。

ぼんぼりにてらされて薄紅が流れていくのがとてもきれいで、

境内を覆うようにしだれる桜のなかにいたら

これからの彼女との間には幸せしかないんだと思った。

 

付き合っては別れてを何度も繰り返した。

喧嘩のバイオリズムが1年ちょうどなのか、春先なると気が立つのかわからないけど

なぜか3月終わりくらいにさよならを告げる。

途中で別れてしまった理由も思い出せないから

きっとたいした理由なんかなかったんだろうけど

そのたびに満開の桜が散っていた。

雨の夜の桜は青く、

ぼんぼりに照らされた彼女は凛とした悲しい顔、今でも忘れられない。

 

彼女と、本当に縁が途絶えたのは大学一年のとき、9月の蒸し暑い夜だった。

 

男のことが好きになってからも、何度かその時々の人と桜を見た。

「また来年一緒に見よな?」といった名古屋の人とは結局それっきり。

弄んでしまった男や、遠距離になり消息もわからない男、

みんな大好きだったけど、彼らとも2回目の桜を見ることはできなかった。

『もしも翌年も一緒に桜を見れたら

あのときのように幸せが続くのかもしれない』

夢見る少女なのか少年なのか、そんなこと考えるようになっていた。

ひとつひとつの思い出を大事にすればいいし、あの頃は戻ってこないのに

どうしてもまたあの幸せの場所を、手にしてみたいと思ってしまう。

 

4月5日、昨日、一回りすこし上の人と3回目のデートをした。

駅までの道で少しそれたところにある桜が目に入った。

彼は気づかずに晩ご飯の話しを続けている。

もう葉桜で、かなり芽吹いている。

なんだかすこしほっとしたら急に触りたくなって、

人がいないことを確認して、彼の手を握ってみた。

驚いた顔をした彼も、同じように人気がないことを確認したら

握り返してくれて「どしたん?」と笑って餃子食べたいねって話をした。