TOKYO埋没毛

情緒しか書きたくない。ホモ。

手紙

 

『あなたへ
 
ひさしぶりです
この手紙がちゃんと届くかはわからないけど、出してみることにしました。
とても自己満足な手紙になっているので、気分がわるくなったら読むのをやめて捨ててください。
 
あなたの友達から、逮捕の連絡が来てから、だいぶ時間が経ってしまいました。
 
今あなたはどこにいますか?
自分は練馬のあの一階の西向きの部屋から、中野にある、4階の日当りのいい部屋に引っ越しました。
あなたが仕事に行く7時になっても薄暗いなんてことはもうなくて、
明け方5時には朝日が見える、見晴らしのいい家だよ。
鍵、返してもらい損ねちゃったね。
 
身体は壊してないですか?
ちゃんとした布団で寝れたのかな。
もう外に出てきてたら一番いいんだけどね。
 
さて。
連絡が来てから2ヶ月も経った今。
本当は手紙だすつもりなかったけど、あなたの誕生日付近にどうしても顔がちらついて、もしも付き合っていたら、ちょうど1年になるはずだった25日に、やはり手紙を書いてみようと思いました。
 
 実は、付き合い初めて3ヶ月くらいで、あなたに前科があるのは知っていました。
最初知ったときは本当にショックだった。
 
「この記事は本当にあなたことなのか」
 
ただ、同時に、点と点がつながって、時折もらしていた後ろ向きな発言の真意が汲み取れた気がしました。
付き合う前に
「君みたいなまじめが子がなんで俺なんかと付き合っちゃうんだね」
と居酒屋でほろ酔いでつぶやいたこと、
「なんで俺こんな風に生きてきちゃったんだろう」
と酔っぱらって泣いていた日もあった。
飲ませすぎてごめんね(笑)
 
けど、毎日夜遅くまで働き、それでも「仕事が楽しい」と意気揚々と話すあなたは、
過去なんかじゃなくて「今」を精一杯生きてた。
 
隣で支えていたい。ずっと応援したいと思った。
どんな過去だっていい。今のあなたが好きだった。
だから、掘り返すのはやめました。
 
でもね。
もしもあのとき、僕が問いつめていて、
ちゃんと向き合って話ができていたらこんなことにならなかったのかな?
喧嘩別れになったかもしれないし、うまくいかなくてすぐ終わっちゃっただけかもしれない。
 
けど、もしかしたら今も二人で前を向いて社畜して、
自分は支えにはなれないかもしれないし、お金もないけど、
だけど、一緒に着実であたたかな毎日をこの部屋で過ごせていたのかもしれない。
 
ちゃんと問いただすべきだったのかもしれない。
聞いて向き合えばよかったのかもしれない。
 
僕は、間違っていたのかもしれない。
そんなことばかり考えてしまいます。
けど、あなたに、これからはどうか幸せになってほしい。

これから先、あなたにたくさん嫌なことが降り掛かったり
過去にまた押しつぶされそうになることもあるかもしれない。
自分のしたことを悔やんで泣く夜もあるかもしれない。
それでも、馬鹿みたいに前向きに、
時々また酔っぱらって弱音を吐いて、
もう無理に着飾らず、見栄なんか張らず、
そのアホっぽい無邪気な笑顔を忘れずに、
前を向いて歩いていってほしい。
 
本当に好きでした。
酔っぱらってすぐ赤くなるところも、
本当は僕のことが好きなくせにつんつんするところも、
こっそり布団をかけ直してくれる優しさも、
寝ぼけて抱きしめてくるその腕の温かさも。
あなたが置き手紙をしてくれたこと覚えてるかな?
人に愛される喜びを、あなたは教えてくれました。
 
そのときの返事ができてないこと気にかかってました。
たくさん愛してくれて、幸せな気持ちを運んでくれてありがとう。
あなたと付き合えてよかった。
 
もう会うことは、きっとないでしょう。
だけど、もしも偶然また出会える日がくるのなら、
あなたの人の良さそうな笑顔をみせてくれると嬉しいな。
あなたの幸せな顔が見れたらいいな。
 
ありがとう。
 
さようなら』