TOKYO埋没毛

情緒しか書きたくない。ホモ。

湿った咳

アプリで出会った男とのキスは、アメスピの香りがした。2番目に付き合った人と同じ味。

大きな身体だった。
6月の締め切った部屋で、彼の汗が私の身体と頬にポタポタと降り、湿らし、模様を作っていく。彼との初めての、どこかでしたことあるようなセックス。
彼の肩を伝う汗を咬むように舐めた。
「かわいい」
会ったばかりの男はお返しにと私の首筋に舌を這わせ、もうどちらのものかもわからなくなった汗を舐め、耳元で何かを囁き続けている。濡れた背中に手を回し私は天井を見た。
汗だけはこの人味がした。

電気を消して窓を開けると湿気った空気が流れ込む。まだ25度を下回っていないのかもしれない。アパートの下からは酔っ払いの声。子どもが泣いている。
横になっても、喘息で咳が止まらず、苦しい。

さっきまでここに人がいたのだ。

シャワーを浴びても、肌にこびりついた男の匂いと、汗が伝う感覚、乾いた咳が湿り気を帯びて、この部屋に漂い、ゆっくりと重く、また沈んでいく。